カテゴリー:美容と笹
江戸後期の花街はオシャレの最先端でした。遊郭の遊女たちのファッションは町娘達のあこがれの的。今でいうファッションリーダーのような存在で、花魁を真似た様々なファッションや化粧が流行しました。
オシャレはセレブにしかできないことでしたが、江戸時代以降、庶民もオシャレができる時代となり、庶民向けのファッションやコスメブランドが生まれました。
浮世絵の展覧会に行くと、唇が 緑色に描かれたものに出会うことがあります。
実際、19世紀に入ってから享和年間以降の浮世絵には緑色の唇が数多く出現し、笹色紅(ささいろべに)として、とくに花街の女性に流行しました。
笹色紅は紅花からつくられた口紅です。
玉虫色(メタリックグリーン)の口紅で、かなりロックな色彩ですが
江戸時代にはラメなどなかったはずです。
どうすれば、このような色を出すことができたのでしょうか。
紅花から赤の色素を取り出す際、麻を使うと純度の高い紅を取り出すことができます。
麻は紅の色素を集めやすい性質があり、紅花の液を何度も麻に吸い込ませ、ろ過すると純度の高い朱を抽出することができます。
紅は薄く伸ばして塗ると優しい赤に。何度も塗って乾かすと、色が変わり玉虫色(メタリックグリーン)になります。純度の高い紅を塗り重ねたときだけ、この発色が生まれます。
当時、笹色紅など口紅は『金一匁(もんめ)紅一匁』といわれるほど高価なものでした。たくさん紅を使えたのは、裕福な女性です。玉虫色の唇は豊かさの象徴でもありました。
つまり、庶民用のコスメが販売された江戸時代においても
笹色紅をつけられるのは、遊郭の太夫たちか裕福な家の女性たちに限られたのです。
となれば、緑色の唇に憧れるのが女心です。
さっそく、安価に同じ効果を上げる方法が発見され、大流行。
江戸も現代も変わらぬ女心ですね。
笹色紅は現代でも販売されています。
伊勢半本店「小町紅」:12,960円
資生堂 「京紅」:12,960円
よーじや 「京紅」:12,344円
相も変わらず高価な化粧品に変わりはないようです。
参考>>笹マニア事典:ササイロ