カテゴリー:クマ笹とは
クマ笹の名前の由来-供米笹(クマイザサ)編-で笹の実について少し触れました。
今回はもう少し広く詳しくタケ類(タケ・ササ・バンブー)の花と実についてお話ししたいと思います。
(写真はカラフトザサの花)
タケ類は開花するとほとんどのものが枯死してしまいます。
一斉に枯れるのを見て、昔の人は伝染病のせいだと考え、伝染するのを恐れて皆伐して焼き払ったりもしました。
しかし近年、一度に枯れる原因は伝染病ではないことが分かっています。
目的を持って植えられた竹の中で有用なものは地下茎を隣の人が貰い受けます。
これをまた貰って植えることがくり返されると、ひとつの部落や渓谷で栽培される竹は同系統のものとなることが多くなります。
そうすると、広大な竹藪の元をたどるとひとつの個体に行き着くため、
似通った環境で育った竹は同時期に開花して
タケ類は開花後に枯れる特徴があるため、同系統のタケ類は一斉に枯れてしまいます。
左:マダケの花。1.穂状花序(すいじょうかじょ) 2.小穂(しょうすい) 3.1つの花 4.外花穎(がいかえい) 5.内花穎(ないかえい) 6.鱗皮(りんぴ) 7.雌蘂(しずい)
右:クマザサの花。1.穂状花序 2.小穂 3.1つの花 4.鱗皮 5.雌蘂
タケ類の開花は珍しく、俗説では60年に一度と言われています。
そのため、開花は不吉の前兆と考えられることもあります。
しかし、あくまで俗説であって科学的根拠はありません。
タケ類の開花の原因は開花結実?
花をつけ、実を結ぶのは植物によく見られる現象です。
タケ類も同様に栄養成長が終わり、生殖成長になると花をつけます。
では、生殖成長になる要因は何でしょうか?
乾燥続きの年には藪の一部がよく開花すること、稈の反面がしばしば開花することから、
体内の炭素化合物が鍵になっているのではないかという説が唱えられています。
稈は炭素化合物の増量で開花します。
左:タケの実。1.モウソウチク 2.ホウライチク 3.ビゼンナリヒラ
右:ササの実。1.シャコタンチク 2.ヤダケ
タケ類に開花がおこると結実…実がなります。
結実の頻度は非常に少なく、よく結実すると考えられているチマキザサでも30%も実をつけません。
・比較的実をつけるタケ類
チマキザサ
スズダケ
ミヤコザサ
メダケ
ネマガリダケ
反対に実をめったにつけない種もあります。少ないものだと、その確率は数万分の1と考えられています(マダケ)。
・めったに実をつけないタケ類
マダケ
ハチク
ヤダケ類
日本のタケ類の実の特徴
小型のものが多くチマキザサでは太さ直径2.5~3mm、長さ6~7mmで100立方cmの重量は73g、数は3000粒です。
日本のタケ類の実は果皮が薄く、種子と区別がつきにくい特徴があります。
熱帯のタケ類の実の特徴
熱帯産のメロカンナ属などでは果皮中にデンプンを蓄えているため厚く、種子との区別が明らかです。
また、巨大で直径5~6cm、長さ10cmにあまるものもあります。
日本のタケ類がなぜ開花してもあまり実をつけないかは、実は明らかになっていません。
考えられるのは、自家不和合性です。
※同じ種の花粉であっても、自己(同じ植物体)の花粉を排除する性質
開花はしても、雄しべと雌しべが、もとは1個体から発育したもののため、
減数分裂ができても何らかの原因で花粉管が伸びなかったりするなど、
受精が行われないのではないかと考えられています。
日本のタケ類の実は採取後、一度でも乾燥すると発芽力がなくなってしまいます。
そのため撒いて発芽させるには採り蒔き(種を保存しないで播くこと)をしないといけません。
そうすれば4~5日で発芽させることができます。
ちょっと特殊なクマザサの実
クマザサの実は少し特殊で休眠期間が半年からそれ以上もあるため
その年に撒いても翌年の4月にならないと発芽してきません。
まず、胚が生長して短いながらも稈を作ります。
その下から1~2稈が出て、そのうち地下茎が基部から出てきてタケ類らしくなってきます。
一年目は大葉が出てきます。モウソウチク、マダケなどは2倍からそれより大きな葉が出てきます。
笹類の祖先型はこのような大きい葉のものから進化発達したのではないかと考えられています。
(出典:「タケ類特徴・鑑賞と栽培」 著:室井綽)