カテゴリー:日本文化と笹
♪会津磐梯山は宝の山よ
♪笹に黄金がなりさがる…
福島の民謡 『会津磐梯山』の歌の一節です。
「笹に黄金がなりさがる」とはどのような意味なのでしょう?
調べてみると…
笹の根もとに黄金の鉱石、または小判が埋蔵されていることを歌ったという説と
黄金色のクマ笹の実のことを歌ったという説の2つが挙げられています。
それぞれが由来となるものを調べてみました。
実をつけたのなら、開花したはずです。
では、いつ頃開花したのでしょうか?
由来となる資料)
高嶋雄三郎著『熊笹のふるさとをたずねて』によると
「武江年表」の江戸時代に笹が大開花結実した年(寛文・慶長)が記されており、
笹の開花サイクル(およそ60年)にあてはまることから、
黄金の笹の歌と関係があるのではないかと考えられているようです。
「笹が豊作、米は不作」
笹の実が実るのは飢饉の前兆と伝えられ、これを元に考えると
笹の実が山民を飢饉から救い、笹の実に感謝して作った歌とも考えられます。
疑問点)
しかし、この説には若干の疑問点があります。
開花したとされる年はおよそ60年の間隔があります。
笹の開花結実は60年に一度といわれていますが、その生態は植物学的に実証されていません。
また、飢饉と笹の実の関係性も根拠となるものはありません。
そうすると、「笹の実黄金説」と結論づけるのは少し早いかもしれません。
笹の開花が60年と言われている理由は諸説あります。
①俗説として伝わっているため
竹笹の寿命が61年目に来ると俗説として伝えられてきたことが最も影響力が強いと考えられます。
しかし、これには植物学的な根拠はありません。
寿命までの期間はまちまちで、短いものは10年、笹は約50年、
竹の類は100年内外と決まった期間はありません。
②中国の十干十二支が関係
中国の人たちが60年に1度と言い出したから、という説もあります。
この60は数字ではなく、中国の十干十二支の一周期が60なため
「めったにおこらない」という意味でこのように言われるようになったとされています。
では、笹の実ではないとすると、なんなのでしょう?
残るは黄金(伝)説です。
会津には古くから伝わる埋蔵金の伝説があります。
もしかして、埋蔵金のことを歌っているのかもしれません。
この歌では、笹の実だけではなく、クマ笹の群生が広がる風景が語られています。
ここでは、徳川義経を案内した金売吉次の財源を歌っているのではないかとこの説では考えられています。
金売吉次
クマ笹の下から黄金が出るということから「ささに小金がなりさがる」と歌われたのではないか?という夢のつまった説です。
もし、そうだとすると、笹の実のような小さなものではなく、笹の株元か根に大判小判がぶら下がった話なのかもしれません。
黄金の眠る笹は今でもあるのでしょうか。
黄金は会津のどこかで人知れず眠り続けているかもしれません。
または、歌にもなっているからには、すっかり掘り尽くされ、
笹の葉だけがさみしく広がっているのかもしれません。