2015.08.18
人間だけじゃない クマ笹で命をつなぐ動物
パンダという呼び名は、ネパール周辺の言語で「竹(笹)を食べるもの」を意味する「ポンガ」に由来するといわれます。中国語では「熊猫」または「大熊猫」と呼ばれますが、アライグマに近い特徴ももっています。近年の遺伝子研究の結果、パンダはクマの近縁であることが明らかになりました。
動物の命を救うクマ笹。パンダはもともと肉食動物だった!
- 《学名》
- Ailuropoda melanoleuca
- 《分類》
- ネコ目クマ科
- 《分布》
- 中国の一部、チベット東部
- 《全長》
- 体長1.2m~1.5m、体高70cm~80cm
- 《特徴》
- 体重100g前後で生まれ、パンダの特徴である白黒模様があらわれるのは生後1ヶ月程度。3ヶ月程度で歩き回れるようになり、親離れした後は単独で行動する。
クマ笹と動物の関係にも深いものがあります。竹や笹を主食とする動物で最も有名なのがパンダ。大きな手で笹を器用に持って食べる様子の愛らしさは、誰もが納得するところです。でも実はクマ科の動物であるパンダはもともと肉食動物。その証拠にパンダの腸の長さは体長の約4~7倍で、他の肉食動物の標準的な長さであるのに対して、牛などの草食動物の腸は体長の約15倍、ヒツジでは約25倍にもなります。草食動物では食べ物を消化して排泄するまでに24時間以上かかるのに対して、パンダは半日程度で排出してしまうので、消化率は20%程度と悪く、1日10~20kgも笹を食べて栄養を補っているのです。パンダが食事以外の時間の多くを睡眠に費やすのも、ゆったりとした動きで生活しているのも、エネルギーを無駄にしないための本能なのです
わずか100g程度で生まれるパンダの赤ちゃんは、生後半年ぐらいで竹や笹を食べ始め、9ヶ月ごろに離乳、1年半ほどで親離れします。メスは4~5才、オスは6~8才で繁殖可能になります。
これでは消化効率が悪いのにもかかわらず、なぜパンダは笹を食べるようになったのでしょうか。そのヒントはパンダの進化の歴史にあります。パンダの化石は中国の広い地域で発見されていますが、その多くは約300万年前のもの。そのころの地球は雪と氷に覆われた氷河期でした。マンモスなど多くの動物が飢えと寒さで絶滅していく中、パンダを救ったのは氷河期でも枯れることのない笹。笹なら他の肉食動物と獲物を巡って争うこともありません。こうして笹を食べるようになったパンダはかたい笹の茎を噛み砕くために頬の筋肉や奥歯が発達しました。クマに比べると顔が丸いのはそのためです。また、笹をつかむことができるように、前肢付近の骨が発達し、「第六の指」とも呼ばれる親指のような突起もあります。そのため、大きな手でも器用に笹を持つことができます。パンダは氷河期を生き抜くために、笹食に適した体へと見事に進化したのです。
まめ知識:レッサーパンダも笹が主食
- 《学名》
- Ailurus fulgens
- 《分類》
- ネコ目レッサーパンダ科
- 《分布》
- 中国南部、ヒマラヤ・ミャンマー北部
- 《全長》
- 体長60cm前後
- 《特徴》
- 体長15㎝前後、体重100g程度で生まれ、5ヶ月で離乳、18~20ヶ月で生殖可能。夜行性で標高1500~4000mの森林や竹林に生息。
レッサーパンダももとは肉食ですが、雑食に進化して笹類を食べることで知られています。パンダと同じように「第六の指」があり、1日に食べる笹の量はなんと自分の体重と同じ5kg。野生の植物は毒素をもっていることが多く、草食動物は体内で解毒する力がありますがレッサーパンダにはこれがないため、解毒作用のある笹を選ぶことで生き残ったのです。